2025年12月17日

カテゴリー:

経営判断の基準を作る考え方


粗利改善の基本:値上げ・原価・ミックスの3点セット


公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄です。 



「粗利が低くて困っている」

「売上はあっても手残りが少ない」



こうした経営者の悩みを解決するために、粗利益(粗利)を改善する必要があります。



粗利を改善するためには、



「値上げ」

「原価削減」

「商品・サービスのミックス(構成比)の見直し」



の3つがあります。






本記事では、この「粗利改善の3点セット」の基本を解説し、どれから着手すべきか、それぞれの成功のポイントを紹介します。



粗利を改善する3つのレバー



経営において利益(粗利)を増やすためのアプローチはシンプルです。



複雑に考えすぎず、以下の3つの要素に分解して考えましょう。



  1. 1.単価を上げる(値上げ)
  2. 2.原価を下げる(コスト削減)
  3. 3組み合わせを変える(商品ミックス)



それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説します。



1. 値上げ:最も効果が大きいがリスクも高い



値上げ(単価アップ)は、最も即効性があり、利益改善効果が大きい方法です。



原価が変わらずに売価だけが上がれば、増えた分はすべてそのまま「利益」になるからです。



実行のポイント



しかし、安易な値上げは「顧客離れ」や「競合との価格競争」を招くリスクがあります。



成功させるためには、以下の準備が不可欠です。



  • 根拠の明確化: 原材料費、物流費、人件費の高騰など、なぜ値上げが必要なのかを数値で示します。
  • ・付加価値の訴求: 価格だけでなく、サービス品質や納期の正確さなど、自社の強みを改めて伝えます。



2. 原価削減:リスクは低いが効果は限定的



原価削減は、顧客への直接的な影響が少ないため、比較的リスクが低い方法です。



  • ・仕入先との価格交渉
  • ・原材料や部材の見直し(代替品の検討)
  • ・製造工程や業務フローの効率化(歩留まり改善)



実行のポイント



原価削減には限界があります。



「これ以上削ると品質に関わる」というラインを超えてコストカットを行うと、顧客満足度が低下し、長期的には売上減少につながります。



「品質(Q)を維持しながら原価(C)を下げる」工夫が求められます。



3. ミックス(構成比)の見直し:最も安全で持続可能



商品・サービスのミックス(販売構成比)を見直すことは、最も安全かつ持続可能な利益改善策です。



例えば、以下の2つの商品があるとします。



  • 商品A: 粗利率 20%(薄利だが売れやすい)
  • 商品B: 粗利率 50%(高収益だが販売数が少ない)



この場合、全体の売上高が変わらなくても、商品Bの販売比率を高めるだけで、会社全体の粗利率はアップします。



実行のポイント



高粗利商品の販売促進キャンペーンを行ったり、セット販売を企画したりするなど、販売戦略(マーケティング)でコントロールできるのが強みです。


どれから着手すべきか?優先順位の考え方



どの手法から取り組むべきかは、会社の状況によりますが、以下のステップで検討することをおすすめします。


  1. 1.現状分析(見える化) まずは商品・サービス別の粗利率を正確に計算します。
  2. 2.値上げの検討 インフレ局面では、まず適正価格への転嫁(値上げ)が可能か検討します。効果が最も大きいためです。
  3. 3.原価とミックスの同時並行 値上げが難しい、あるいは時間がかかる場合は、直ちに不採算商品の見直し(ミックス改善)と、無駄なコストの削減に着手します。



3つの手法を一つだけ選ぶのではなく、リスクと効果のバランスを見ながら組み合わせて実施することが、強い財務体質を作る近道です。



まとめ



粗利改善は魔法ではありません。



「値上げ」「原価削減」「ミックス改善」の3つを地道に実行することで必ず成果が出ます。



まずは自社のすべての商品・サービスの粗利率を「見える化」することから始めましょう。



公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄

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