2025年12月16日

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経営判断の基準を作る考え方


黒字倒産の原因とは?利益とキャッシュの違いを理解して会社を守る方法


公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄です。



「決算書上は利益が出ているのに、なぜか毎月の資金繰りが苦しい……」

「今期は過去最高益だったはずなのに、手元の現金が減っている」



このような矛盾に頭を抱えている経営者様は少なくありません。



実は、中小企業の倒産理由の多くは、赤字ではなく「手元の現金(キャッシュ)不足」によるものです。



いわゆる「黒字倒産」です。





利益が出ているのに倒産する?黒字倒産のメカニズム



まず大前提として理解すべきなのは、「利益」と「キャッシュ(現金)」は全くの別物であるということです。



利益とキャッシュの決定的な違い



  • 利益(損益計算書):売上から費用を差し引いた「会計上の計算結果」
  • ・キャッシュ(現金):実際に会社の手元にある「使えるお金」



例えば、今月100万円の売上が確定したとします。



会計上は「100万円の売上」が計上され利益が出ますが、もしその入金が「翌々月末」であれば、手元の現金は2ヶ月後まで増えません。



この「売上が立ってから、現金が入ってくるまでのタイムラグ」こそが、黒字倒産を引き起こす最大の要因です。




黒字倒産を引き起こす3つの原因



利益が出ている企業が資金ショートを起こす主な原因は、以下の3点に集約されます。



1. 売掛金の回収サイトが長い(または遅延)



売上は計上されているものの、入金までの期間(サイト)が長い場合です。



入金を待っている間にも、仕入代金や従業員の給与、家賃などの支払いは待ってくれません。



「入ってくるお金」より「出ていくお金」のタイミングが早いと、手元の資金が枯渇します。



2. 過剰在庫による現金の固定化



「在庫」は会計上「資産」として計上されるため、ただ持っているだけでは費用にならず、利益を圧迫しません。



しかし、在庫はお金が形を変えたものです。商品が売れて現金化されるまでは、仕入れに使った現金が倉庫に眠っている(固定化されている)のと同じ状態です。



3. 無理な設備投資による現金流出



利益が出たタイミングで、節税対策なども兼ねて大型の機械や車両を購入するケースです。



設備投資は減価償却によって数年にわけて費用化されるため、決算書上の利益は残ります。



しかし、購入代金(現金)は一気に出ていくため、キャッシュフローが急激に悪化するリスクがあります。




対策:資金繰り表で「お金の動き」を見える化する



黒字倒産を防ぐ唯一かつ最強の手段は、「損益計算書(P/L)」だけでなく「資金繰り表」を作成・管理することです。



資金繰り表とは、現金の入出金をスケジュール化し、「いつ、いくら足りなくなるか」を未来予測するツールです。



最低限管理すべき3つの項目



複雑な表を作る必要はありません。まずは以下の3列を管理することから始めましょう。



  1. 1.現金残高:月初の時点でいくらあるか
  2. 2.入金予定:売掛金は「いつ」入金されるか
  3. 3.出金予定:仕入、人件費、税金、返済などは「いつ」引き落とされるか



これらを3ヶ月〜半年先まで予測することで、「来月の支払いが足りないかもしれない」といった危機を早期に察知できます。



危険信号!資金繰り悪化の兆候



以下のような兆候が見られたら、黒字倒産の予備軍かもしれません。すぐに資金繰り表を見直してください。



  • ・売掛金の回収サイトが以前より長くなっている
  • ・在庫の回転期間が延びている(在庫が滞留している)
  • ・銀行からの借入金が増え続けている
  • ・手形の割引やファクタリングを頻繁に行うようになった




まとめ:会社を潰さないために



「勘定合って銭足らず」という言葉があるように、利益が出ていても現金が底をつけば会社は倒産します。



逆に言えば、赤字であっても現金さえ回っていれば会社は潰れません。



経営者にとって重要なのは、決算書の利益だけでなく、「今、使えるお金がいくらあるか」を常に把握しておくことです。



まずは月次で簡易的な資金繰り表を作成し、3ヶ月先のキャッシュフローを予測する習慣をつけましょう。

 


公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄

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