2025年10月27日
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決算期を変更する3つのメリットと活用ポイント — 節税・資金繰り・業務効率化の観点から
365日ブログ
3,010日目
公認会計士・税理士
畑中 外茂栄です。
会社を設立した時に、必ず決算月を決めます。
実際に経営を進めていく中で「繁忙期と重なって経理が大変」「想定以上の利益が出て法人税の負担が増えそう」と感じたことはありませんか?
実は、会社は後からでも「決算期」を変更することが可能です。
決算期を見直すことで、節税効果・資金繰りの改善・業務負担の軽減・役員報酬の柔軟化 といったメリットが得られるケースがあります。
今回は、経営判断として知っておきたい「決算期変更のメリット」と、その活用ポイントを解説します。
1. 決算期変更とは何か?
決算期とは、会社の「事業年度の末日」を指します。
一般的には「3月決算」が多いものの、法律上はどの月でも自由に設定することができます。
一度決めた決算期も、定款の変更や所轄税務署などへの届出を行うことで変更可能です。
変更を行うと、変更した年度が「1年未満の短期決算」となる場合もあるため、税務上の扱いに注意が必要です。
2. 決算期を変更することで得られる4つの主なメリット
2-1. 節税対策が可能になる
決算月に大きな利益が集中すると、法人税や住民税の負担が一気に増えます。
そこで決算期をずらすことで、利益の発生時期をコントロールし、税負担の分散や節税につなげることができます。
また、新設法人の場合、消費税の免税期間の長さに影響することもあります。
決算期の変更によって免税期間を有利に活用できるケースもあるため、税理士と相談の上で判断するのが望ましいでしょう。
2-2. 資金繰り(キャッシュフロー)の改善
法人税や地方税の納付期限は「決算期末から2か月以内」です。
売上の回収サイクルや繁忙期の時期と決算が合っていないと、納税資金の準備が難しくなる場合があります。
決算期を資金が手元に多く残る時期や売上回収後に設定すれば、資金繰りが安定し、納税の負担を軽減できます。
2-3. 繁忙期と決算をずらして業務を効率化
決算業務(締め処理、棚卸、決算書作成、申告準備など)は経理担当者にとって大きな負担です。
もし決算月が繁忙期と重なっている場合、経理業務が後回しになったり、ミスが増えたりするリスクがあります。
決算期を閑散期や落ち着いた時期にずらすことで、決算業務を余裕を持って進められ、経営全体の効率も向上します。
3. 決算期を変更する際の手続きと注意点
決算期の変更には、定款の事業年度の記載を変更する必要があります。
株式会社の場合は株主総会での特別決議が必要で、その後、以下の手続きを行います。
・所轄税務署・都道府県税事務所・市町村へ異動届を提出- ・法務局で定款変更登記を実施
また、注意すべき点として以下があります。
・短期決算により、減価償却や消費税の計算が複雑になることがある- ・財務分析や業績比較が一時的に難しくなる
- ・決算期変更の直後は経理処理・税務対応の負担が増える
これらを踏まえ、専門家に相談の上で進めることをおすすめします。
4. 決算期の見直しを検討すべき会社の特徴
次のような会社は、決算期変更を検討する価値があります。
・売上の季節変動が大きく、繁忙期に決算が重なっている- ・今期の利益が大きく、節税のタイミングを調整したい
- ・納税時期と資金回収のタイミングが合わず、資金繰りが厳しい
- ・取引先やグループ会社と決算期を合わせたい
これらに当てはまる場合は、経営計画・税務戦略の一環として決算期の変更を検討してみましょう。
5. まとめ・次のアクション
決算期を変更することは、単なる「月の変更」ではなく、経営戦略全体に関わる重要な意思決定です。
節税効果や資金繰り改善、業務効率化など多くのメリットが期待できる一方、手続きや税務上の影響にも注意が必要です。
公認会計士・税理士
畑中 外茂栄





