2025年8月15日
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資金調達の基本:運転資金と設備資金を正しく区別しよう

365日ブログ
2,937日目
公認会計士・税理士
畑中 外茂栄です
今日は資金調達に関する内容です。
資金調達において「運転資金」と「設備資金」を適切に区別し、
目的に合った借入判断を行うことは、企業経営、特に中小企業にとって非常に重要です。
本記事では、それぞれの定義・特徴・改善策、そして借入判断のポイントについて解説します。
運転資金とは
運転資金とは、企業が日々の営業活動を円滑に行うために必要な資金で、
売上から現金回収までのタイムラグを埋める役割があります。
- 売掛金・棚卸資産の増加
売上が増えると、売掛金や棚卸資産(仕掛品・製品・原材料など)も増え、現金が滞留します。これは「黒字倒産」の典型的な要因です。 - 費用の支払い
人件費、家賃、水道光熱費、通信費、広告宣伝費、支払利息など、毎月発生する固定費や、売上に比例して増減する変動費の支払いに充てられます。 - 悪化要因
- 売掛金の回収期間が長い
- 仕入や外注費の支払いサイクルが短い
- 過剰在庫
- 役員貸付金や仮払金など回収不能な債権の存在(銀行評価の低下要因)
- 改善策
回収サイト短縮、支払いサイト延長、在庫管理の徹底等。
設備資金とは
設備資金は、事業活動で長期使用する固定資産(建物・機械装置・車両・土地など)を取得するための資金です。
- 投資の性質
設備投資は経営構造を変える「戦略的意思決定」であり、効果は長期にわたります。 - 会計上の扱い
建物等の取得原価は減価償却により耐用年数に分割計上されます。減価償却費は実際の現金支出を伴わない費用になります。
土地は減価償却はされません、 - 評価とリスク
投資採算は発生主義の収支に加えて、キャッシュフローの評価が大切です。
借入判断のポイント
1. キャッシュフロー重視
- 銀行は損益計算書だけでなく返済余力(キャッシュフロー)を重視します。特に元金返済は損益計算書に出ない現金支出です。
- 設備投資や売上増に伴う運転資金の確保など、資金回収の見込みを立てることが重要です。
2. 経営計画と試算表の関係
- 事業計画の作成は必須ではありませんが、現状の試算表に加えて用意しておくことで心証が良くなります。
- なるべくタイムリーに月次試算表を用意できる体制を整えましょう。
3. 銀行との関係構築
- 自社に合った銀行を選び、日本政策金融公庫も活用しましょう。
- 決算書3期分と直近試算表が基本提出書類です。設備資金は別途対象資産の見積書などを手配しましょう。
- 役員貸付金や仮払金などの使途不明金は銀行評価を下げます。作らない・増やさない・早期解消を心がけましょう。
まとめ
運転資金と設備資金は性質も評価方法も異なります。
両者の特性を理解し、戦略的な資金調達を行いましょう。
公認会計士・税理士
畑中 外茂栄