2025年12月23日

カテゴリー:

出口戦略と財務戦略


株式分割の効果とは?投資家層拡大と流動性向上の戦略


公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄です。



大手のアパレル会社が株式分割を発表しました。



これにより、最低投資額が下がり、より多くの投資家が購入しやすい環境が整います。



株式分割は、単なる数字の調整ではありません。



企業が成長戦略の一環として実施したり、

事業承継の場面でも極めて重要な施策です。



株式分割とは?仕組みと基本



株式分割とは、1株をいくつかに分割し、発行済み株式数を増やすことです。



例えば「1株を3株」に分割する場合、保有株数は3倍になります。



一方で、株価は分割比率に応じて(この場合は3分の1に)下がります。理論上、投資家の保有資産価値は変わりません。



しかし、この一見「見かけ上の変化」に見える措置が、実は企業と市場にとって重要な戦略的効果をもたらします。



主な効果は以下の3点です。



企業が狙う3つの戦略的効果



1. 投資家層の拡大



最も大きな効果は、株主基盤の拡大です。株価が下がることで最低投資額(単元株価格)が下がり、個人投資家が購入しやすくなります。



しまむらの例で見ると、これまで100万円超だった最低投資額が30万円台になりました。



これにより、資金の制約があった**若年層や投資初心者も参入しやすくなります。



幅広い層に株を持ってもらうことは、長期的なファンの獲得につながります。



2. 流動性の向上



株価が下がり、1単元(100株)あたりの購入金額が小さくなると、市場での売買が活発になります。



  • 取引の活性化:売り買いがしやすくなる
  • 適正な価格形成:多くの参加者が売買することで、企業の価値が株価に正確に反映されやすくなる



しまむら自身も、今回の分割の目的として「株式の流動性を高めること」を明示しています。



3. ポジティブな心理的効果



株価の水準が下がることで、投資家心理にプラスの影響を与えます。



  • 割安感:「買いやすい価格になった」「これから上昇する余地がある」という心理が働き、投資意欲を刺激します。
  • 自信のシグナル:分割の実施は、企業が自社の将来に対して自信を持っていることの表れと受け取られ、市場からの評価向上につながる場合があります。



成長戦略としての分割



大手のアパレル会社は、最高益を更新するなど、非常に堅調な業績を維持しています。



このような成長フェーズにある企業が株式分割を実施することは、単なる技術的な操作以上の意味を持ちます。



好業績を背景に投資家の注目を集め、「より多くの投資家に自社の成長ストーリーを届け、株主価値を向上させる」という明確な意思表示と言えるでしょう。



まとめ



株式分割は、以下のような多面的なメリットをもたらします。



  • 投資家層の拡大(買いやすくなる)
  • 流動性の向上(売買しやすくなる)
  • 市場評価の向上(注目が集まる)



また、中小企業の事業承継の局面でも、株式数があまりにも少なすぎると一株当たりが大きくなります。



その際に株式分割をして一株当たりの株価が下がり、贈与する株数を調整しやすくすることもできます。



自社の資本政策上、株価や株式数は重要な指標です。



公認会計士・税理士

畑中 外茂栄

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