2025年12月9日

カテゴリー:

税務調査


税務署に「狙われない」ための帳簿と証憑の整理・保存術


公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄です。


令和6事務年度の法人税等調査において、追徴税額は3,407億円と直近10年で最高を記録しました。



調査件数自体は減少傾向にあるものの、1件あたりの追徴税額は増加しています。



この背景には、国税庁がAI(人工知能)を活用し、「不正が見込まれる納税者」への重点調査を強化していることが挙げられます。



AIによる選定精度が上がっている今、どのような会社がターゲットになりやすいのでしょうか。また、どのような対策が必要なのでしょうか。



税務署が「狙う」会社の特徴



税務調査で指摘を受けやすい会社には、明確な共通点があります。AIや調査官は、主に以下のポイントに注目しています。



  • 帳簿と証憑の不整合: 帳簿の記録と、領収書・請求書の内容が合致していない。
  • 「グレーゾーン」取引の証拠不足: 交際費か会議費か曖昧なものなど、判断が分かれる取引の記録が不十分。
  • 特殊な取引の説明不足: 海外取引や関連会社間取引など、複雑な取引があるにもかかわらず、説明資料(契約書等)が整備されていない。



今すぐ実践すべき3つの対策



調査官に「隙」を見せないために、今すぐ取り組むべき3つの具体策をご紹介します。



① 帳簿と証憑のタイムリーなチェックを実施する



領収書や請求書は、発生したその日のうちに帳簿へ記録し、証憑と突合する習慣をつけましょう。



月末や決算期にまとめて処理しようとすると、記憶が曖昧になり、不整合や紛失のリスクが格段に高まります。



クラウド会計ソフトを活用すれば、スマホで撮影した領収書を自動で仕訳できるため、業務の効率化と属人化の防止が同時に実現できます。



② グレーゾーン取引の「文書化」



税務判断が分かれそうな取引こそ、事前の文書化が不可欠です。



  • 交際費と会議費の線引き: 参加者、目的、内容を詳細に記録する
  • ・役員貸付金: 返済計画書を作成し、議事録を残す
  • ・海外取引: 契約書やインボイスを確実に保管する



これらは「後から聞かれて答える」のではなく、「最初から資料がある」状態にしておくことが重要です。



調査が入ってから慌てて作成した資料は、信憑性を疑われる原因になります。



③ 電子帳簿保存法への適切な対応



昨今、電子帳簿保存法が厳格化されました。



適切な対応ができていない会社は、それだけで「帳簿の信頼性が低い(管理体制が甘い)」と判断されるリスクがあります。

  • ・タイムスタンプの付与
  • ・訂正・削除の履歴が残るシステムの利用
  • ・「日付・金額・取引先」での検索機能の実装



これらの法要件を満たしたシステム導入や運用フローの確立は、もはや必須事項と言えます。



まとめ:AI時代の税務調査は「事前の準備」が全て



AI活用が進む現代の税務調査において、「後からうまく説明して乗り切る」という考え方は通用しづらくなっています。評価されるのは、「最初から整っている」という事実です。



日々の帳簿・証憑管理を徹底し、グレーゾーン取引の根拠資料を残し、電子帳簿保存法へ適応すること。



これらを着実に進めることで、税務リスクは大幅に減らせます。



対策に「早すぎる」ということはありません。



まずは今日から、帳簿と証憑の整合性チェックを習慣化することから始めましょう。



公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄

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