2026年2月1日
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【事業承継】経営者の引退設計は「退職金・株・相続」の3点セット
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公認会計士・税理士
畑中 外茂栄です。
「いつかは引退する」と頭ではわかっていても、具体的な設計を先送りにしている経営者は少なくありません。
しかし、引退直前になって慌てて動き出すと、税務上のメリットを享受できなかったり、後継者争いの火種を残してしまったりするリスクがあります。
事業承継を円滑に進め、経営者自身のセカンドライフを守るためには、「退職金・株・相続」の三点をセットで早期に設計しておくことが重要です。

① 退職金設計:老後資金と納税資金の確保
第一の柱は、経営者ご自身の「老後資金」をどう確保するかです。
役員退職金制度は設けられていたとしても、いざ支給となると「資金繰りが厳しい」「積立不足」あるいは「手取りが想定より少ない」といった問題が生じがちです。
安心できる引退を迎えるために、以下のポイントを早めに試算し直しましょう。
・退職金の適正額(功績倍率などの規定確認)- ・支給のタイミング(勇退時期の明確化)
- ・受け取り方法(全額現預金or現物支給)
後継者にバトンを渡したあとの生活費はもちろん、将来の「相続税の納税資金」を退職金から賄う計画であれば、余裕を持った資金設計が不可欠です。
② 株式の処遇:経営権の円滑な移転
オーナー経営者の多くは、自社株の大半を保有しています。
引退時にこの「株(=経営権)」をどう扱うかを決めておかないと、後継者への権限移譲が進まないだけでなく、相続時の争族トラブルの原因となります。
親族内承継の場合
後継者が安定して経営できるよう、株式を集約させる計画が必要です。
・暦年贈与や精算課税制度を活用した生前贈与- ・遺留分に配慮した遺言書の作成
- ・種類株式(議決権制限株式など)の活用
M&A(第三者承継)の場合
会社を売却して引退する場合は、「いつまでに」「いくらで」手放したいかというイメージを明確にし、アドバイザーと共有しておくことで、引退後のプロセスがスムーズになります。
③ 相続対策:会社の継続と「争族」防止
経営者に万が一のことがあった際、自社株や事業用不動産が法定相続分通りに分散してしまうと、会社の意思決定ができなくなり、経営が立ち行かなくなる恐れがあります。
相続税と経営の安定、この両面から対策を講じることが大切です。
・遺言の活用: 株式の承継先を明確に指定する- ・生命保険の活用: 代償分割資金や納税資金を確保する
- ・自社株評価の引き下げ: 事業用資産の買い替えや評価減制度を活用する
また、最も効果的な対策は「対話」です。
家族や後継者と、
「誰に何を残すか」
「会社の将来をどう考えているか」
を生前に話し合っておくこととで、紛争を未然に防ぐことができます。
まとめ:今から動き始めることが最大の対策
1.退職金で、自分の生活と納税資金を確保する- 2.株の処遇で、後継者の経営基盤を盤石にする
- 3.相続対策で、争いと税負担を最小限に抑える
これら三点はバラバラに考えるのではなく、「三位一体」で設計して初めて機能します。
トータルで設計することで、経営者自身の引退後の安心が得られるだけでなく、会社が永続するための強固な土台となります。
事業承継対策は「いつか」ではなく、今この瞬間から動き始めることが肝心です。
公認会計士・税理士
畑中 外茂栄





