2025年9月26日
カテゴリー:
生前贈与・相続時精算課税

365日ブログ
2,979日目
公認会計士・税理士
畑中 外茂栄です。
中小企業のオーナー経営者にとって、「自社株の承継」は事業承継対策の中でも特に重要な課題です。
令和5年度の税制改正により、これまで以上に「相続時精算課税制度」の活用が検討される機会が増えています。
今回は、最新の贈与税制改正を踏まえ、生前贈与と相続時精算課税の違いや、自社株承継への応用ポイントを整理します。

1. 相続時精算課税制度の活用機会の増加
これまで相続時精算課税は、贈与を受けた財産を相続時に改めて精算する制度であり、使い勝手が限定的と考えられていました。
しかし、令和5年度税制改正により、相続税・贈与税を一体的にとらえる方向での制度見直しが進められ
ています。これにより、相続時精算課税制度を選択する意義が増し、特に自社株式の承継場面での活用が注目されています。
2. 相続時精算課税と自社株の評価固定
自社株は、会社の業績や将来の成長期待によって株価が大きく変動します。
例えば、今後株価が上昇すると見込まれる場合には、
相続時精算課税制度を利用して株価が低い時点で贈与しておくことで、贈与時の価額で相続財産の価額を固定できます。
これは、将来的な相続税負担を軽減する有効な手段となります。
3. 令和6年以降の基礎控除の創設
令和6年からは、相続時精算課税制度においても年間110万円の基礎控除が新設されました。
従来の相続時精算課税では基礎控除がなく、贈与を行うと即座に課税対象となっていましたが、
この改正により暦年贈与と同様に小額の贈与を非課税で行えるようになり、利用の柔軟性が広がりました。
4. 連年贈与(定期贈与)のリスク回避
暦年贈与における基礎控除(110万円)を利用し、毎年贈与を繰り返すケースも多く見られます。
しかし、注意すべきは「定期贈与」とみなされるリスクです。
例えば、「毎年110万円を10年間贈与する」と契約してしまうと、その契約が成立した時点で10年分の贈与が一括して行われたものと判断され、課税対象となる可能性があります。
このリスクを回避するためには、毎年贈与契約書を作成し、署名押印することが重要です。
また確定申告することも有効です。
5. 相続開始前加算期間の延長
暦年贈与については、相続開始前に行った贈与の一部が相続財産に加算される「持ち戻し」制度があります。
これまでの加算期間は「相続開始前3年以内」でしたが、令和5年度税制改正により、7年以内まで段階的に延長されることになりました。
そのため、今後はより早めに贈与や事業承継対策を進める必要があります。
まとめ
贈与税制は改正により柔軟性が広がった一方、加算期間の延長や定期贈与のリスクなど注意点も増えています。
事業承継は一度の判断が長期にわたり影響します。
制度改正を正しく理解し、税理士や専門家と相談しながら最適な選択を行うことが大切です。
公認会計士・税理士
畑中 外茂栄