2025年9月15日
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後継者不在の現実と「第三者承継(M&A)」の必然性

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公認会計士・税理士
畑中 外茂栄です。
第三者承継という選択肢
日本の中小企業は地域経済と雇用の土台です。
その一方で、経営者の高齢化や後継者難から休廃業・解散が過去最多水準、後継者不在率も依然5割超という現実があります。
会社が事業を継続するための「出口」は複数ありますが、
親族内承継だけでなく第三者承継(M&A)を早期に検討することが、
雇用・技術・取引網を守る最も現実的な打ち手になりつつあります。

黒字でも会社は消える
- ・休廃業・解散は年間6万件超(2024年) … コロナ後の政策支援終了や経営者の高齢化等を背景に、市場からの退出が加速。
- ・直近期が黒字でも退出する企業が約半数 … いわゆる「黒字廃業」。採算に問題がないのに、後継者や経営体制の不備で会社が消えてしまうリスクが現実化しています。
- ・後継者不在率は5割超(2024年) … 改善傾向にあるものの、依然として多くの企業が「後継者がいない/未定」の状態。
上記のデータから、収益性だけでは会社は存続しないことがわかります。「承継の設計」が大切です。黒字だけでは会社は維持できません。
企業継続の5つの出口と、中小企業に現実的な“2つの選択肢”
企業が取りうる出口は概ね次の5つです。
- 1.上場(IPO) … 成長性・ガバナンス強化・多額のコストが前提。
- 2.親族内承継 … 伝統やカルチャーを守りやすいが、資金・税務・適任者不在の課題。
- 3.第三者承継(M&A) … 外部資本・外部人材の力を取り込み、雇用や技術を守りやすい。
- 4.清算 … 債務精算を前提に事業を畳む選択。
- 5.倒産 … 資金ショート等による不本意な市場退出。
中小企業の多くにとって現実的な選択肢は、「親族内承継」、そして「第三者承継(M&A)」の2つです。後継者候補がいない、社内承継が難しい場合は、第三者承継が実質的な“唯一の選択”になります。
第三者承継(M&A)を選ぶべきケース
- ・親族・社内に適任者がいない/育成の目処が立たない
- ・売上・利益は堅調だが、経営者の健康・年齢リスクが高い
- ・取引先や従業員の雇用を守りたい(廃業時の影響が大)
- ・新たな資本・人材・販路が必要(成長の“第二のエンジン”)
第三者承継は「乗っ取り」ではありません。雇用・技術・取引関係を次世代へ繋ぐ手段であり、
適切な相手と取り組むことでシナジーを生みます。
今日からできる初手:3つの実務アクション
① 承継デッドラインを決める
- 3~5年先の最終引退時期を暫定設定。任期・健康・資金イベント(借入の返済ピーク、オーナーの年齢)等を勘案し、カレンダーに明示します。
② ステークホルダーの棚卸
- 株主・役員・幹部・メインバンク・顧問税理士/社労士/弁護士・主要取引先を一覧化。連絡経路・意思決定関与度・想定反応をメモ。
③ 情報パッケージの下書き作成
- ノンネームシート(匿名ティーザー)/企業概要書(強み・Bルート商品・許認可・称号・主要KPI)の準備を進める。
先延ばしの罠:よくある誤解ベスト3
1.「業績がもう少し良くなったら」 → 時間が最も貴重な資産です。買い手を見つけたり条件交渉をするのも、時間がかかります。
2.「節税重視の決算でOK」 → 企業価値評価では将来キャッシュフローや平準化修正が重視されます。評価される“見せ方”へ早期切替をしましょう。
3.「仲介に丸投げすれば安心」 → 支援の質にバラつきがあります。。利益相反管理・守秘義務・セカンドオピニオンを前提に、士業中心のチームで進める方法もあります。
まとめ:自社の「承継カレンダー」を作りましょう
・事業を残す目的は雇用と技術を次世代に繋ぐこと。- ・選択肢の比較では、親族内承継と第三者承継(M&A)が実務的。
- ・「いつまでに、だれと、どのような姿になること」を決めるのが経営者の仕事です。
まずは自社の現状の把握を中心に、
大切にしていることや残したいものを言語化をしていきましょう。
公認会計士・税理士
畑中 外茂栄