2025年9月16日

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出口戦略と財務戦略


日本的M&A(Marriage & Alliance)」という選択肢~小規模企業で機能する承継モデル~

365日ブログ 

2,969日目 


公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄です。



前回までの記事はこちらです。


今回は私が理事を務めている、

日本的M&A推進財団の思想や姿勢についても紹介します。

リンクはこちら





1. なぜ第三者承継は広がらないのか——3つの構造的な壁



第三者承継の有効性は理解されつつある一方、実際の現場では普及が鈍いままです。

その背景を仕組み・品質・行動の3層で捉え直します。



1-1. 「仕組み」の壁:小規模向けの土台が脆弱



  • ・多くの仲介会社は案件規模の大きい領域を主戦場としています。年商数億~十数億の会社に合う実務が不足する傾向にあります。
  • ・地域で動く中小・小規模には、プラットフォームの粒度(匿名情報の設計、探索範囲、照会スピード)が合致しないことがあります。



1-2. 「品質」の壁:支援のばらつきと利益相反



  • ・着手金だけ受けて実働が薄い、売り手・買い手双方の事情を無視した強引なマッチングリスク説明の欠落など、質のばらつきが存在します。
  • ・一者が売り手・買い手の双方から報酬を得る利益相反の管理が甘いと、条件調整が歪みやすい傾向があります。



1-3. 「行動」の壁:先延ばしと情報非対称



  • ・経営者は日常の運営に忙しく、承継の議題は緊急性が無いため、後ろ倒しになりがちです。
  • ・承継の前提知識(評価・税務・DD・PMI)が断片的で、最初の一手が出にくい傾向があります。



3つの壁は相互に連鎖します。

正しい型(フレーム)と信頼できる伴走者で一気に崩す設計が必要です。




2. M&Aの再定義。「買収と合併」から「結び直し」へ——日本的M&Aの定義



ここで言う日本的M&Aは、Mergers & Acquisitionsを「買収と合併」ではなく、

Marriage & Alliance(結婚と同盟)すなわち歴史・技術・人・顧客との関係資産を次世代に接続する行為として捉え直す考え方です。

  • 目的の中心は“存続と成長”:雇用・技術・取引関係を守り、相乗効果(シナジー)で事業を伸ばす。
  • 対等な合意形成:条件闘争ではなく、目的共有→条件設計の順番で進める。
  • ・地域文脈を尊重:地場産業・伝統・コミュニティの価値を無形資産として扱う。
  • ・PMIまで一貫:決済がゴールではなく、統合(PMI)を見据えた準備と運用を大切にする。





3. 士業ネットワークが小規模企業で強い7つの理由



税理士・公認会計士・弁護士・司法書士・社労士・中小企業診断士・行政書士など、国家資格者の連携が中核となるモデルが、小規模企業では特に有効です。

  1. 1.収益源の多角化で中立性を確保:M&A報酬だけに依存せず、本質支援を低報酬でも継続できる。
  2. 2.情報の確度とスピード:顧問として日常的に会社の正味の情報に触れているため、判断が速い。
  3. 3.法務・税務・会計・労務を横断資格に裏打ちされた知見で、スキームを無理なく設計。
  4. 4.守秘義務で安心:職業倫理に基づく秘密保持は、承継の初期段階で大きな安全網。
  5. 5.地域密着×全国ハブ:地元で動きながら、全国の士業ネットワークで相手探索の射程を広げられる。
  6. 6.事前準備~PMIをカバー:規程整備、契約書棚卸、労務・人事の調整など、日常業務と重なる領域を自然にカバー。
  7. 7.ツールの伴走活用:M&Aプラットフォームやデータ室の使い方を経営者と一緒に設計し、機能を最大化。



士業チームの役割は「代理人」だけではありません。翻訳者・編集者・監督として、全体を噛み合わせるのが仕事です。






4. 実務フレーム:日本的M&Aの進め方(概略)



日本的M&Aは、目的→関係者合意→条件設計→クロージング→PMIの順に段階的合意を積み上げます。

  • 目的共有シート:雇用・技術・顧客・地域への約束事を“譲れない条件/交渉可能条件”に仕分け。
  • 匿名情報の設計:ノンネームで魅力と注意点をバランスよく提示。過小/過大表現を避ける。
  • 探索の3ルート:プラットフォーム(待ち)/ロングリスト(攻め)/支援者経由(任せる)。
  • 基本合意の“鍵”:情報開示、DD、資金調達の扉を開ける前提。独占期間・解除条項でディールの質を守る。
  • ・PMIの設計先行:人・プロセス・数字(KPI)のプランを最初から並走設計。




5. まとめ:日本的M&Aは“方法論”であり“姿勢”



  • ・第三者承継は会社の結び直し。所有だけでなく、人・技術・顧客関係を次へ繋ぐ作法が問われる。
  • ・士業ネットワークは、中立性・専門性・守秘の3点で小規模企業に最適。
  • ・成功の鍵は、目的→型→合意→PMIの順番を崩さないこと。



次世代に会社を残すため、

早期に課題を整理していきましょう。



公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄

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