2025年12月12日

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事業承継


事業承継の「株の集約」完全ガイド:分散株主対策で失敗しないための手順とポイント


公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄です。 



中小企業の事業承継において、意外と見落とされがちなのが「株式の分散」リスクです。



本記事では、事業承継税制の特例活用や、後継者が安定した経営を行うために欠かせない「株の集約」について、具体的な方法や注意点を解説します。



なぜ「株の集約」が必要なのか



事業承継において株の集約が必須とされる主な理由は、経営権の安定と「争族」防止のためです。



株が分散していると、重要な経営判断の際に反対されたり、相続発生時に権利を主張されたりするリスクがあります。



経営の舵取りをスムーズにするためにも、議決権の集約は不可欠です。



    株の集約方法:3つの主要アプローチ



    現状の株主構成に合わせて、以下の3つの方法を検討します。



    1. 後継者への生前贈与

    最も確実性が高い方法です。後継者に株式を集中させることで、権限を集中させることができます。



    • ポイント: 後継者以外の子供には「現金」や「不動産」などの別資産を渡すことでバランスを取ります。
    • 注意点: 一気に贈与すると税負担が大きくなる可能性があるため、暦年贈与などを活用して段階的に進める計画性が必要です。



    2. 遺言書で後継者に集中させる



    「誰にどの財産(株式)を渡すか」を遺言書で明確にしておく方法です。



    • メリット: 相続税の基礎控除や各種特例を活用できます。
    • リスク: 他の相続人から「遺留分(最低限の取り分)」を請求されるリスクがあります。
    • ・対策: 「除外合意」や「固定合意」を活用し、あらかじめ遺留分対策を講じた遺言書の設計が重要です。



    3. 後継者が他の株主から買い取る



    後継者自身が、分散している少数株主から株式を買い取る方法です。



    • メリット: 後継者の意思で主体的に進められます。
    • 課題: 買取資金の準備が必要です。
    • ・対策: 分割払いの交渉や、役員報酬を増額してそこから天引き(原資にする)形などを検討しましょう。



    税務上の注意点:自社株評価



    株の集約を行う際、最も重要なのが「自社株の評価額(いくらか?)」です。



    株価が高ければ高いほど、買取資金や税負担が重くなります。



    自社株の評価方法は、会社の規模(大会社・中会社・小会社)によって異なりますが、主に以下の方式が用いられます。



    • 類似業種比準方式:上場している同業他社の株価を参考にする方式
    • ・純資産価額方式:会社の資産総額から負債を引いた額を基にする方式
    • ・併用方式:上記2つを組み合わせて計算する方式



    実務的な進め方 5ステップ



    1. 1.現状把握 現在の株主名簿を確認し、誰が何株持っているか、持株比率を正確に把握します。
    2. 2.集約計画の策定 正式な後継者を確定し、どの手法(贈与・遺言・買取)で集約するかを決定します。
    3. 3.関係者との調整 後継者以外の推定相続人や、少数株主と話し合いの場を持ちます。
    4. 4.実行 贈与契約書の締結、遺言書の作成(公正証書遺言を推奨)、株式譲渡契約の実行などを行います。
    5. 5.税務申告 事業承継税制の適用申請や、贈与税・相続税の申告を行います。



    よくある失敗パターン



    対策を行う際は、以下の落とし穴に注意してください。



    • 後継者以外への配慮不足 → 株式以外の資産(現金・不動産・保険金など)で調整を行わないと、親族間トラブルに発展します。
    • 自社株評価の誤り → 評価が高すぎる時期に移転してしまい、無駄な税金を払うケースがあります。株価引き下げ対策も併せて検討が必要です。
    • ・遺留分減殺請求への無防備 → 遺言書を書くだけで安心せず、生前に「遺留分の放棄」の許可を家庭裁判所で得るなどの対策も有効です。



    まとめ



    株の集約は一朝一夕にはできません。



    親族間の合意形成や納税資金の準備を含めると、少なくとも相続開始(引退予定)の3〜5年前から準備を始めることが理想的です。



    まずは現状把握をして、承継計画に落とし込んでいきましょう。



    公認会計士・税理士 

    畑中 外茂栄

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