2025年11月19日

カテゴリー:

出口戦略と財務戦略


「会社を売るか、残すか」を考え始めるべきタイミングはいつか


公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄です。 



日本では、70歳代で現役というオーナー社長も珍しくありません。



しかし多くの経営者が、「会社をいつ売るべきか」「後継者がいない場合どうすべきか」という問いに向き合うのは、体調不良や重要幹部の退職などの出来事が起きた後です。



しかし実際には、会社を売る/残すを検討すべきタイミングはもっと手前にあります。





1. 「売るか、残すか」の判断を先送りすると何が起きるか



最も多い失敗が、タイミングを逃すことです。



  • ・売上、利益が長期的に低下してしまい、企業価値が落ちた状態でM&Aに出すことになる
  • ・主要幹部が退職し、買い手からビジネスモデルとして評価が下がる
  • ・社長の突然の病気・事故により、会社が混乱して売却どころではなくなる
  • ・後継者を育てる余裕がなくなり、親族内承継や社員承継の選択肢が実質消滅する

タイミングを逃しただけで、実際の価値の何倍もの差が出ることも珍しくありません。




2. いつから考えればいいのか?答えは「55歳から」



多くの専門家が一致して勧めるのが、55歳を超えたら事業承継・M&Aを“選択肢として”準備開始することです。


理由は3つあります。



①準備に最低3~5年かかる



後継者育成・経営改善・株価対策(自社株対策)・銀行調整など、事業承継は着手から実行まで3~5年が標準的


60代に入った段階で大きな修正は難しくなります。



②企業価値のピークを逃さない



会社は必ずしも「右肩上がり」ではありません。


50代後半〜60代前半は、売却可能な価値が高い時期になる企業が多く、最も高く売れるタイミングと重なることが多いのが現実です。



③健康リスク・幹部退職リスクが急増する



経営者の健康と主要幹部の退職は、M&Aの成立に大きな影響を与えます。


55歳から準備すれば、想定外リスクが起きても軌道修正できる余裕が生まれます。




3. 「売る・残す」を考えるべき具体的なサイン



以下のうち 1つでも当てはまる 場合は、事業承継/M&Aを考え始める時期だといえます。



●・後継者候補が見当たらない

子どもが継がない、社内にも候補がいない。これは典型的なタイミング。



●・主要顧客や主要社員への依存度が高い

買い手から「リスクが高い」と見なされるため、早めの組織改善が必要です。



●・売上が緩やかに下降し始めた



下降局面で売却すると企業価値は下がるため、ビジネスモデルの再構築をするためにも早期の対策が必要です。



●・設備投資や採用の判断が重くなってきた

「次のステージ」に投資できないと感じたら、世代交代の合図です。





4. 方向性を決めておく



ポイントは、「売る」を今すぐ決断することではないということです。


重要なのは、


✔ 親族内承継
✔ 社員承継(EBO)
✔ 第三者承継(M&A)
✔ 清算


という複数の選択肢を並べ、どれを選んでも後悔しない状態を55歳から整えておくことです。



「残したい」と思ったときに残せるように、
「売りたい」と思ったときに高値で売れるように、準備こそが中小企業オーナーの最大の武器になります。






5. 迷ったら“棚卸し”



会社を売るか残すかを決める前に、まずは以下の棚卸しをしてみてください。



  • ・現在の企業価値の把握(簡易バリュエーションでOK)
  • ・後継者候補の有無
  • ・銀行との関係・財務状態
  • ・オーナー個人の資産、相続の状況
  • ・社長が「本当にやりたい人生」の確認



これらを並べるだけでも、進むべき方向が一気に明確になります。



公認会計士・税理士 

畑中 外茂栄

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