2025年9月2日
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中小焼肉店が次々と閉店…経営危機を乗り越えるための財務的視点

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公認会計士・税理士
畑中 外茂栄です。
焼肉業界では2025年に入り、中小規模の焼肉店の倒産が過去最多ペースで増加しており、多くの経営者が資金繰りや利益確保に頭を悩ませています。

今回はその背景と、財務改善のために今すぐ取り組むべきポイントを整理しました。
焼肉店倒産が過去最多ペースに
2025年1〜8月の焼肉店倒産件数は32件。
すでに2024年の年間件数と同水準に達しており、今年は過去最多を更新する見込みです。
小規模店舗だけでなく、中規模店の倒産も急増しており、業界全体に危機感が広がっています。
原材料コストの急上昇が経営を直撃
牛肉価格は2020年比で7割以上の上昇。野菜などを含めると、
焼肉の総コストは約1.3倍に膨れ上がりました。
しかし、客離れを恐れて価格転嫁できず、経営を圧迫しています。
値上げできないジレンマ
「リーズナブルさ」が強みの店舗ほど、値上げをすれば客足が遠のき、
価格を据え置けば赤字が拡大するという悪循環に陥っています。まさに“消耗戦”が続いています。
中規模焼肉店の設備投資が仇に
好立地への出店や店舗拡大で借入を増やした中規模事業者は、競争激化と返済負担に板挟みとなり、倒産に追い込まれるケースが目立ちます。拡大戦略の見直しが急務です。
コロナ融資の返済開始で資金繰り悪化
インバウンド需要は戻りつつある一方で、食材・人件費の高騰が重くのしかかります。
さらに、コロナ融資の返済開始が重なり、資金繰りに行き詰まる経営者が増えています。
なぜ価格転嫁が進まないのか?
主な要因は以下の2つです。
- ・消費者の節約志向
- ・同業他社との価格競争
実際、メニュー価格は2020年比で1割程度しか上昇していない状況です。
価格転嫁の限界は近づいています。
生き残る店舗は「業態転換」や「差別化」に注力
成功している店舗の多くは、次のような戦略を取っています。
- ・ジンギスカンなど他業態への転換
- ・女性やファミリー層を意識した新メニュー開発
- ・高付加価値のサービス導入
中小店舗においても、自社の強みの再定義が急務です。
税理士から見た「経営改善のポイント」
数字を正しく把握し、意思決定に活かすことが重要です。
・原価率とFLコスト(食材+人件費)を可視化- ・メニュー別の採算分析で不採算商品を見直す
- ・利益管理の精度を高める
「勘と経験」ではなく、「数字に基づいた経営」にシフトすることが生き残りのカギです。
「リーズナブルさ」だけでは勝てない時代へ
価格競争だけに依存するモデルは限界を迎えています。
今後は「付加価値」で勝負できるかどうかが分かれ道です。
まず見直すべきは「数字」と「資金計画」
・キャッシュフロー計画の再設計- ・借入返済スケジュールの見直し
- ・価格設定の柔軟化
すべての体制を整えることは難しいかもしませんが、
徐々に現実的かつ実行可能なプランに落とし込むことが可能です。
公認会計士・税理士
畑中 外茂栄