2025年10月10日
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納税資金のための融資は可能か?

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公認会計士・税理士
畑中 外茂栄です。
企業経営では、決算時や年度末にまとまった税金の支払いが発生します。
特に法人税などは、一定の利益が出ている企業にとって避けられない支出です。
しかし、納税のタイミングと資金繰りのタイミングが合わず、一時的に資金が不足することもあります。
こうしたケースで活用できるのが「納税資金の融資」です。
納税資金の融資とは?
納税資金の融資とは、その名のとおり「税金を納めるための資金」を目的とした銀行融資です。
意外に思われる方も多いのですが、
銀行の融資メニューの中には正式に「納税資金」を目的としたものが存在します。
つまり、税金を払うための融資は、れっきとした金融支援の一つなのです。
すべての税金が対象ではない
ただし、どんな税金でも融資の対象となるわけではありません。
銀行が融資を検討するのは、「これから納付期限を迎える税金」が基本です。
すでに納付期限を過ぎた「未納分」については、
資金繰りに問題があると見なされるため、融資の対象外となるケースがほとんどです。
また、税目によっても取り扱いが異なります。
一般的に融資の対象となるのは、法人税や事業税などの所得・事業活動に関連する税金です。
一方で、消費税などは融資の対象外とされるのが一般的です。
消費税が対象外となる理由
消費税は、企業が「取引先から預かった税金」を一時的に管理し、後に納付する仕組みになっています。
つまり、企業のお金ではなく、あくまで「預かり金」です。
それにもかかわらず消費税を納める資金が不足しているということは、
本来納付のために確保しておくべき資金を、他の用途に流用している可能性があると銀行は判断します。
このような事情から、金融機関は消費税分の納税資金については原則として融資を行いません。
銀行が確認するポイント
納税資金の融資を申し込む際、銀行は資金の使途を厳密に確認します。
そのため、「納付書の写しなどのエビデンス(証拠資料)」の提出が求められます。
実際に、納税資金の名目で融資を申請しても、
内容を確認すると「一部が消費税や手形決済資金に充てられていた」というケースもあります。
このように、他の資金目的が混在していると、
銀行側の信頼を損ねてしまい、融資の審査にマイナスの影響を与えることがあります。
銀行に正直に相談することが大切
もしも実際の資金ニーズが「納税」ではなく「赤字補填」や「運転資金」であるなら、
無理に納税資金名目で申請するのではなく、正直に相談することが重要です。
銀行は資金使途の透明性を重視するため、
誠実な説明がある方が信頼関係を築きやすく、
結果的に融資の可能性も高まります。
納税の時期が近づいたら、早めに試算表を用意し、納税額と資金繰りを確認しておきましょう。
資金繰りに不安がある場合は、決算前から銀行に相談することで、スムーズな融資検討が可能になります。
公認会計士・税理士
畑中 外茂栄